教育制度・研修プログラムについて

研修プログラム/強みと特徴

広島大学病理専門研修プログラム 経験できる症例数と疾患内容

広島大学病理専門研修プログラムにより、奥深い外科病理を個々の症例を通じて知識を蓄積し、精緻な観察と適切な認識に基づいた診断能力を身につけることが可能です。
組織診断や迅速診断及び病理解剖に関しては受験資格要件となる症例数は余裕を持って経験可能です。殊に病理解剖数について広島大学病院は、全国の大学病院の中でもトップクラスであり、様々な疾患の解剖を経験できることが研修医にとって大きなメリットです。更に各連携病院における臨床科の特徴を反映した疾患の病理解剖を行うことも可能です。

豊富な症例にあたることができ、様々な症例への対応力がつきます

広島大学病院の組織診断症例数は12000例以上で、疾患の内容としては悪性腫瘍のみならず眼疾患、心疾患、口腔疾患、神経・筋疾患など多彩で豊富な症例を経験できる環境が整っています。本学はがん診療連携拠点病院、がんゲノム医療拠点病院の指定を受け、中国四国ブロックで唯一の小児がん拠点病院であり、稀少な症例も診ることができます。各地域の中核病院や連携病院など多くの病院と連携することで専攻医の年次や習得状況に応じてこれらの病院の中から適切な環境の病院に派遣することにより、各連携病院における臨床科の特徴を反映した疾患領域の症例の経験を積むことが可能です。

プログラムにおける到達目標

一般目標

『病理医は臨床医である』ことを自覚し、患者中心のチーム医療を構成する病理医の役割と責務を理解する。

病理組織学的診断あるいは細胞学的診断に基づく診療を実践・体験し真のEvidence Based Medicineを理解する。

様々な疾患が全臓器的な関連の中で発生して一臓器の異常が他臓器に大きな影響を及ぼすことを理解し、疾患を総合的かつ全身的に把握できる。

病理診断科の業務は細胞診を含めた病理診断や病理解剖のみならずCPC、臓器ごとの症例検討会、医療評価委員会など診断の質的向上や自己評価などの業務を分担し、各診療科、中央診療部門などと共に高度先進医療の重責を担うことを理解する。

行動目標

他の病理医や他科の医師、臨床検査技師をはじめとする他の医療従事者と適切なコミュニケーションをとり、時宜を得た情報交換やコンサルテーションができる。

摘出臓器標本のバイオハザードを理解し、感染の危険性を踏まえた臓器の取り扱い方法と他の医療従事者への感染防止対策を実践できる。

切除・摘出された全臓器標本を部位別、切除法別に確認し臓器標本を容れる各容器と照合するなど検体の取り違い防止のために最大の注意を払うことの重要性を理解し、それをプロトコールに従って実践できる。

摘出臓器標本を適切に展開・切割し必要に応じて固定用板に貼り付け、至適固定条件や検索方法に応じた固定方法を選択し固定液の管理を行うことができる。

摘出臓器標本の肉眼的観察、切り出し、検鏡、病理診断報告書の作成を行うことができる。

細胞診検体の適切な処理、検鏡、細胞検査士と合議し適切な推定診断を付けることができる。

病理解剖の手技を理解し、肉眼的観察、切り出し、検鏡、病理解剖診断報告書の作成を行うことができる。

診断の補助、確定のための様々な組織化学的染色、免疫組織化学的染色、電子顕微鏡的検索、分子生物学的検索の意義を理解し、必要に応じてこれらを行うことができる。

診断の補助、確定のための様々な組織化学的染色、免疫組織化学的染色、電子顕微鏡的検索、分子生物学的検索の意義を理解し、必要に応じてこれらを行うことができる。

研修内容

講義・セミナー・カンファレンス

報告書の書き方、各種疾患の診断学の基礎、細胞診の見方、抄読会などを定期的に開催します。各種のスライドカンファレンスや病理集談会に参加することにより稀少症例や難解症例に触れる機会が多く設けられています。また、各臓器の専門性を有する指導医のレクチャーにより、専門的な知識の整理や習得が可能です。これに加えて臓器ごとの様々な臨床科との合同症例検討会に参加して病理所見を呈示し、画像検査との対比や主治医たちの疑問点に真摯に応えることで、疾患の理解を深めることが出来ます。

地域医療の経験

病理医不在の病院への出張診断(補助)、出張解剖(補助)、迅速診断(補助)による診断業務等の経験を積む機会を用意しています。専攻医の付けた診断は指導医により全例確認され、ディスカッション顕微鏡を用いて組織標本を検鏡しながらの指導を受けます。

学会などの学術活動

専攻医は病理学会総会における学会発表は必須です。その内容は指導医と相談して決めますが、出来るだけ臨床病理学的あるいは分子生物学的な研究を始めることが望ましいです。一方、スライドカンファレンスや病理集談会では各症例の診断の妥当性を議論しますので、専攻医は積極的に症例を呈示することにします。これらの準備や質疑応答を通して発表の技術や手法及び疾患や研究に関する理解を深めることが出来ます。国内の学会出張旅費は支給されます(所属施設によって少々事情が異なりますので個々で確認してみてください)。

病理外来研修

広島大学病院では病理外来あるいはセカンドオピニオンの受付はしているが、現状では専攻医が患者対応する機会は極めて少ないです。連携施設の一部では、希望すれば病理外来に関する研修を行うことが出来ます。

病理組織学的検査

外科病理は奥深いのですが個々の症例を通じて知識を蓄積し、精緻な観察と適切な認識に基づいた診断能力を身につけることが基本です。

手術標本

指導医と共に摘出臓器標本を適切に展開・切割し、肉眼写真を撮影する。手術標本の肉眼的観察、各臓器癌取り扱い規約あるいはマニュアルに従った切り出し、検鏡の後病理診断報告書の下書きを作成し指導医による添削指導、ディスカッション顕微鏡を用いて組織標本を検鏡しながらの指導を受ける。手術標本の病理診断報告書は標本受付後1週間以内に提出する。

生検標本

検鏡の後病理診断報告書の下書きを作成し指導医による添削指導、ディスカッション顕微鏡を用いて組織標本を検鏡しながらの指導を受ける。生検標本の病理診断報告書は標本受付後2~3日以内に提出する。

病理解剖

専攻医は執刀するまでに5例の介助を経験しなければならない。指導医と共に病理解剖受付時に変死体あるいは死因に不審な点がないかを主治医に質問し病理解剖を行うことの法的妥当性を確認する。指導医と共に主治医から臨床経過及び臨床上の疑問点について説明を受け、症例の問題点を把握した上で検索手技を選択、工夫し全臓器の肉眼的観察と診断、切り出し、検鏡の後病理解剖診断報告書の下書きを作成して指導医による添削指導、ディスカッション顕微鏡を用いて組織標本を検鏡しながらの指導を受ける。病理解剖診断報告書は執刀後3カ月以内に提出する。(肉眼所見のみに基づいた断定診断は剖検後2日以内に提出する。)
更に本学ではCPCを初期研修医の症例呈示により行っており、研修指導医を補助して初期研修医の指導を行うことが望ましい。

学術研究活動

広島大学病院の研修ではresearch mindを持った専攻医を養成する。それは決して難しいことではなく、日常的に経験する症例の裏には未知の領域が広がっていることに目を開き、その疑問点の探求に思いを巡らせてみることから始まるであろう。具体的な端緒としては、学内におけるセミナー、ミーティングや抄読会などの研修の機会を利用して知識を身に付け、何らかの研究活動に携わることが望ましい。その内容やいつから始めるかは専攻医自身の希望と関心のある領域を考慮して指導医とよく相談して決める。